OCL Lab(OCLラボ)

Z世代の育て方―叱らずに伸ばす「フィードバック」の新ルール

2025年10月24日

「もっとちゃんとやって」

新人として働き始めて間もない頃、先輩からのフィードバックはいつもこんな風に抽象的でした。何をどう「ちゃんと」すればいいのか?――具体的な指針がないまま、ただ戸惑う日々でした。

私は、大手航空会社で客室乗務員として働いた後、インストラクターとして若手育成に携わりました。現在は転職し企業内教育に関する仕事をしています。

現在の職場でインストラクショナルデザイン(ID)を学んだことで、当時の経験を違う視点で捉え直すことができるようになりました。

この記事では、私自身の経験と、若手を育成する立場となって見てきたZ世代の特徴をもとに、「機能する評価文化」について考えてみたいと思います。

若手育成を担当していたとき、最初に戸惑ったのは彼らの「反応の薄さ」でした。

こちらがフィードバックをしても、良くも悪くも淡々としていて、表情からは何を考えているのか読み取りにくいことが多くありました。私が新人だった頃は先輩にフィードバックをもらいに行くことが当たり前でしたが、最近では自分から積極的に「フィードバックをください」と言いに来る若手はほとんどいません。

育成担当として「彼らは、本当にフィードバックを必要としているのだろうか?」と疑問に思ったこともありました。

しかし、人材育成を続けるうちに気づいたのは、彼らは決してフィードバックを拒んでいるのではなく、「意味のあるフィードバック」を待っているということでした。

私たちがフィードバックをしなければ、若手社員は「気にかけてもらえていない」と感じてしまうこともあるのです。

いくつかの調査でも発表されていますが、Z世代の多くは心の中では成長のための指針、つまりフィードバックを求めています。しかし、それを言語化して求めることに不慣れな様子が見られます。

観察していて気づいたのは、Z世代は「情報との距離感」が私たちの世代とは異なるということです。

SNSなど、双方向のコミュニケーションが当たり前の環境で育った彼らは、一方的に与えられる情報よりも、対話の中で自然に共有される情報を好みます。

先日、美容系YouTuberの動画のコメント欄で、「これってどこで買えるんですか?」と質問しているZ世代の姿を見ました。

私なら動画を見てブランド名で検索するところですが、彼女たちはコメント欄で対話することを選んでいるように思いました。YouTubeの投稿者や他の視聴者とのやり取りの中で、情報を得ようとしているのです。

これは、”探さない”というより、”対話の中で学ぶ”習慣が根付いているとも言えます。

そのため、職場でも形式的に「フィードバックをください」と言いに行くのではなく、日常的なコミュニケーションの中で自然にフィードバックが共有される関係性を待っているのかもしれません。

彼らが求めているのは、「ただの指摘」ではなく「対話を通じて、自分ごととして理解できる説明」といえそうです。

しかし、Z世代の彼らが確実に成長する瞬間も多々目にしてきました。
特に効果があったのは、行動の背景・原理・目的などを体系立てて伝えることです。

例えば、機内サービスのマニュアルには手順が書かれていますが、「なぜこの手順になったのか」「どんなトラブルがあって、こうなったのか」まで伝えると、若手は別の場面でも応用できるようになりました。

「あ、この状況も同じ考え方でいいんですね」

そう言って、マニュアルにない場面でも適切に判断できる新人が増えていったのです。

今、インストラクショナルデザイン(ID)を学んで振り返ると、これはまさにID理論が示す「転移(Transfer)」が起きた瞬間だったのだと分かります。学んだ知識を別の文脈で応用できる――これがZ世代の学びを加速させる鍵なのです。

さて、Z世代ではない人たち(私自身も含みます)は、フィードバックに対してどのようなイメージをもっているでしょうか?私は、職場でのフィードバックは「怖い」というイメージを持っていました。

しかし、転職した職場で、私は初めて「フィードバックが怖くない」という感覚を味わいました。

その理由は、上司が、できていない点を指摘するだけでなく、必ず「次にどうすれば良くなるか」を伝えてくれるからです。しかも、感情的にではなく、構造的に話してくれました。

例えば、お客様対応についてなら、このような形です。

「この部分の情報が不足していたから、相手に伝わりにくかったと思う。次回は、背景を先に説明してから本題に入ると、もっとスムーズになるよ」

こんな風に、事実→解釈→次の行動が明確に示されると、素直に受け止められるのです。

インストラクショナルデザイン(ID)では、学びの設計をADDIE(アディ―)モデルという5つのプロセスで考えます。

それは Analysis(分析)→ Design(設計)→ Development(開発)→ Implementation(実施)→ Evaluation(評価) という流れです。

このうち「Evaluation(評価)」は、学びを”終わらせるため”ではなく、”次の成長につなげるため”の段階とされています。

つまり、評価とは「単に点をつけること」ではなく、「次にどう動けばもっと良くなるかを見つけること」と言い換えることもできるでしょう。

私の上司のフィードバックもこの考え方に通じています。できていない点の指摘で終わるのではなく、「次にどうすればいいか」を一緒に考える――。

それは、Z世代にとっても”怖くないフィードバック”であり、学びの出発点といえそうです。

私自身の経験と、若手育成の現場で学んだことを振り返ると、「ポジティブな評価文化」には3つのポイントがあると考えています。

① 感情ではなく、構造で伝える

例えば、飛行機に乗れば聞こえるアナウンス。新人だとなかなか上手にできないものです。

しかし、「アナウンス、もっと上手にやって」と言われても、何を改善すればいいのか新人は理解できません。

問題は、声の大きさなのか?滑舌なのか?話す速度なのか?マイクとの距離なのか? そして、どれを、どのようにすれば「良いアナウンス」という評価になるのか? ――具体的な要素を示してもらえなければ、次に活かせないのです。

フィードバックは、「何が」「なぜ」「どうすれば」を明確にする必要があります。否定ではなく、行動の改善点を示すこと。これがID視点で考える「構造化されたフィードバック」です。

② 現在地と”次の一歩”を示す

「できていないことの羅列」だけでは、成長の道筋が見えません。

「今、あなたはここにいて、次はこのレベルを目指そう」と具体的に示されることで、学習者は安心して前に進めます。ルーブリック(評価基準表)などを使って水準を可視化することも有効です。

  • ルーブリック: 評価の観点、尺度(レベル)、それぞれの尺度の定義をマトリクス形式で明示した評価基準表。行動の質の達成度を客観的に測定するために利用されます。

③ 定期的な対話の場をつくる

私の場合、先輩がその都度指摘をしてくれましたが、まとまった時間を確保して一緒に業務を振り返る機会がほとんどありませんでした。

現在の職場で初めて「GROWモデル」などのコーチング手法を学び、コーチングや1on1の重要性を実感しました。対話を通じて相互理解を深めることが、ポジティブな評価文化の土台になります。

対話の質を高めるためには、体系的なコーチングスキルの習得が欠かせません。構造化された対話手法を学ぶことで、上司と部下の信頼関係が深まり、若手の成長を加速させることができます。

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新入社員は、評価されること自体を恐れているのではありません。彼らが知りたいのは、自分の現在地と次の一歩なのです。

「評価=ジャッジ」ではなく「評価=ナビゲーション」へ。

この転換こそが、Z世代の学びを”受け身”から”自走”へ変えるスイッチになります。

この記事を読んで「自社の評価文化を見直してみたい」と感じた方は、インストラクショナルデザインを学んでみるのもおすすめです。