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【新人研修】やりっぱなしを防ぐ「評価」中心のPDCA実践法

2025年11月18日

多くの新人・若手研修担当者が、情熱を込めて企画した研修の「効果」が見えずに悩んでいます。

研修での学びがほとんど実務に活かされていない、管理職の多くが若手の主体性不足を感じている──そんなお声をよく頂きます。

多くの場合、その背景には研修が「やりっぱなし」で終わっていることがあります。
研修が単なる「イベント」で終わってしまうと、現場での行動変容や組織成果につながらず、学びの効果が持続しません。

そこでこの記事では、“やりっぱなし研修”から脱却し、着実に成果を出すための鍵となる「評価」に焦点を当て、教育設計の科学であるインストラクショナルデザイン(ID)の考え方をもとに、「評価中心の研修設計」を解説します。

PDCAサイクル

実際、研修の評価は、研修直後の「満足度アンケート」のみという企業も多いのではないでしょうか。しかし、「楽しかった」「勉強になった」という反応は、現場での「行動変容」や「業績向上」とは異なったものです。

研修で習得した知識やスキルを評価する仕組みがなければ、「何が良くて何が課題だったのか」を判断することができず、PDCAにおける「Check」や「Action」が機能しません。結果として同じ内容を繰り返すだけの“やりっぱなし研修”に陥る可能性が高くなるでしょう。

この悪循環を断ち切るには、「実施」中心から「評価」中心へ――設計思想そのものを転換する必要があります。

では、この悪循環から抜け出すには、どうすればよいのでしょうか。

確実な成果を出すための鍵となるのが、教育設計の科学的アプローチであるインストラクショナルデザイン(ID)です。IDでは、「何を教えるか」から始めるのではなく、「何を達成させるか」(=評価・ゴール)から逆算して研修全体を設計します。

ここで役立つのが、カークパトリックの4段階評価モデルです。

研修評価の世界標準として60年以上活用されており、受講者の満足度から事業成果まで、4つの階層で研修の効果を測定します。このモデルは、研修の「最終ゴール」である事業への貢献(レベル4)から逆算して、評価基準を設定します。

レベル評価項目評価の焦点
レベル4結果(Result)事業業績や組織成果への貢献
レベル3行動(Behavior)研修後の職務行動の変化・実践度
レベル2学習(Learning)知識・スキル・態度の習得度
レベル1反応(Reaction)受講者の満足度・感想

成果を出す研修は、まず「レベル4:結果」としてどのような事業成果を出したいかを定義し、次に「レベル3:行動」として受講者にどのような行動を取ってほしいかを具体化します。その上で、「レベル2:学習」として必要な知識・スキルを導き出し、研修コンテンツを設計する。つまり評価基準こそが研修の「設計図」となり、実務で活かせる行動へ直結するのです。

評価中心の研修を実践するには、次の2点が重要です。

1. 学習目標を具体的な「行動」で示す

レベル3の「行動変容」を測るには、目標を観察して捉えられる行動で定義する必要があります。

NG例OK例
積極性を身につけるチームミーティングで、週に1回以上、改善案を自ら提案することができる
コミュニケーション力を高める他部署に何かを依頼する際、必ず『期限・背景・期待する成果』の3点を明確に伝えることができる
計画性を持つ毎週月曜9時までに、週次タスクを洗い出し、優先順位をつけて上司に共有することができる

このように、「誰が」「どのような行動を」「どの程度行うか」という形式で目標を記述することで、評価の土台を築くことができます。

2. 研修の「前・中・後」に評価を配置する

研修の効果を最大化するために、「評価」を単発のイベントとしてではなく、研修の前・中・後を通じた一貫したプロセスとして設計することが重要です。カークパトリックの4段階評価モデルを活用しながら、PDCAサイクルの各フェーズに評価を位置づけることで、学習の質と実践への定着を高めることができます。

  • 【研修前】事前評価(P段階)
     受講者の現在のスキルレベルを測定し、研修後の効果を比較するためのベースラインを明確にします。これにより、研修の目的やゴールも明確になり、「成果を測れる研修」の基礎ができます。
  • 【研修中】形成評価(D段階)
     ロールプレイングや小テストなどを通じて学習の進捗を可視化します。また、講師からの即時フィードバックを取り入れることで、受講者が自らの学びを修正・深化できるよう支援します。
  • 【研修後】事後・追跡評価(C/A段階)
     研修直後に知識・スキルの習得度(レベル2)を測定し、さらに数か月後に現場での行動変容(レベル3)を上司と連携して確認します。

特にレベル3の「行動評価」では、上司と行動チェックリストを共有し、具体的な変化を観察・支援することが鍵となります。

研修で学んだことを現場で実践し、組織として成果に結びつける――そのための仕組みこそが、「PDCAが生きる研修」を生みます。

研修における評価の仕組みを整えることは、単なる手間や費用といった「コスト」ではなく、若手の成長を促し、組織の成果につなげるための「戦略的投資」です。

1. 評価は「フィードバック」となり成長を促す

学習目標と評価基準が明確になることで、若手社員は「何を期待されているか」を具体的に理解し、不足点に対する自律的な改善行動を起こします。曖昧な評価ではなく、行動データに基づいたフィードバックこそが、若手の主体性を引き出し、成長を加速させるのです。

2. 経営層と現場をつなぐ「共通言語」になる

レベル4の「結果」から逆算した評価設計は、研修の目的を「知識提供」から「事業貢献」へと引き上げます。これにより、経営層には投資対効果(ROI)をデータで示すことが可能となり、現場の上司には具体的な行動目標を伝えることができます。

評価の仕組みを共通言語とすることで、研修担当者、受講者、現場上司、経営層が一体となり、成果につながる人材育成を実現するための強固な土台が築かれるのです。

研修を「やりっぱなし」にせず、新人・若手の確実な成長と組織の成果につなげる鍵は、研修のゴールを明確にして学習成果を可視化する「評価」中心の設計にあります。インストラクショナルデザインに基づき、「レベル4の結果」から逆算して具体的な「行動目標」を設定し、その評価をPDCAサイクル全体に組み込むことで、研修は受講者の行動を変え、現場を動かす力強い一手となるはずです。

まずは、ご自身が担当する研修の「学習目標」を「具体的な行動」で定義し直し、「評価方法」を見直すことから始めてみませんか?

インストラクショナルデザインを活用した「教え方」や「研修設計」をさらに詳しく学びたい方は、ぜひ私たちのプログラムをご活用ください。

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